東野圭吾さんの、ガリレオシリーズ第一作『探偵ガリレオ』を読みました。作品の紹介と、初読後の感想、あらすじ&個人的に気になった箇所(引用)をまとめます。
紹介文
突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた犯罪と謎に天才科学者が挑む。連作ミステリー・シリーズ第一作。解説・佐野史郎(裏表紙より)
「常識を超えた謎に挑む」
「刑事は奇怪な事件を抱えて天才物理学者の扉を叩く」のキャッチコピーとともに、シリーズ第1作「探偵ガリレオ」が1998年5月に発売された。
ガリレオと称される天才物理学者・湯川学が、常識を超えた謎に挑むミステリー。 最先端科学、さらには専門知識を必要とするトリックを扱ったミステリーは、理系出身の著者ならではの独創性を誇る。通常だったらありえないトリックも魅力だが、その上に、「この人だったら、こういうことをしそうだ」という人物造形も読みどころ。
https://www.bunshun.co.jp/galileo/
本の情報
『探偵ガリレオ』(文春文庫)/東野圭吾【著】
・単行本(1998/5/27)293ページ
・文庫本(2002/2/10)330ページ
・解説は、俳優の佐野史郎さん
目次
・第一章・燃える(もえる)7
・第二章・転写る(うつる)73
・第三章・壊死る(くさる)135
・第四章・爆ぜる(はぜる)201
・第五章・離脱る(ぬける)263
・解説・佐野史郎 326
→ 章ごとのあらすじが、ウィキペディアに詳しく書かれています。探偵ガリレオwiki
ガリレオシリーズ
・『探偵ガリレオ』
・『予知夢』
・『容疑者Xの献身』
・『ガリレオの苦悩』
・『聖女の救済』
・『真夏の方程式』
・『虚像の道化師』
・『禁断の魔術』
・『沈黙のパレード』
・『透明な螺旋』、2021年09月03日発売
※ 『容疑者Xの献身』、第6回(2006年)本格ミステリ大賞受賞、第134回(2005年下半期)直木賞受賞、2008年映画化、エドガー賞候補
ガリレオシリーズ三作目 『容疑者Xの献身』が以下のランキング14位でした。
初読後の感想
あくまでも、個人的な感想ですが、面白かったですかと問われたら、そうでもありませんでしたと答えます。かと言って、印象に残るような作品になりそうですかと問われても、そうでもないですと答えます。誰かに薦めようとは、あまり思えていません。理由としては、科学が多少好きだからかもしれません。トリックに対して、当然そうですねくらいにしか思えませんでした。なるほどそうだったのか、という驚きや納得みたいなものが、あまり感じられませんでした。他のガリレオシリーズや、科学ミステリー作品をあまり読んでいませんので、比較できませんが、ここまでが作品全体の感想です。
それでも、せっかく読んだので、作品の紹介をしたいと思います。人気のある作品なので、人気のある理由を考えてみたいと思います。作品のジャンルがミステリーなので、ネタバレしてしまっては、作品を読む愉しみがなくなるといけないので、内容については出来るだけ控えます。
ガリレオシリーズ第一作『探偵ガリレオ』 は、短編小説集で、一編あたり六十ページくらいの短編五話で構成されています。一章のあの伏線が五章でも出てくるみたいな短編連作ではないので、ミステリー慣れしていなくても、どんな読み方になっても比較的読みやすいような作品かと思います。
物理学科の助教授が登場するので、もちろん科学で謎を解き明かしてくれます。どの章でも科学知識が登場します。十分丁寧に説明してくれますので、科学知識がなくても愉しめる作品だと思います。しかしながら、科学的な説明は、そう言われたら当然そうですねと、どうしても飲み込むしかない面があり、その点において、好みが分かれるかもしれません。科学知識の素養のある方が、湯川学より先に謎を解いてしまったなんてこともあるのか気になります。湯川学と競い合っても面白いのかもしれません。
作中で科学実験をしてくれますが、科学実験は自分の目で見ないとわかりにくい、少し想像しにくいということがあるかと思います。しかしながら、今は便利な時代なので、動画や画像を検索してみると、それらが視覚的に理解を手助けをしてくれます。わかりにくいと感じたら、一度、検索してみてください。その結果、科学の面白さにハマってしまうなんてこともあっても、面白いのではないかなと思います。
あとは、湯川学という人物に、癖があって面白いから、このガリレオシリーズが好きだと仰る方も、多いのではないかと思います。純粋な科学的思考・推論と、科学者としてのポリシー、そしてお茶目さと言えばいいでしょうか、合理的な思考を披露するのが常な湯川学ですが、その人間性について注目してみてください。草薙刑事が友人だと言う、そんな湯川学との掛け合いに、その瞬間だけは、この作品がミステリーだということを少し忘れさせてくれるかもしれません。
あらすじ&個人的に気になった箇所(引用)
章ごとのあらすじは、ウィキペディアに詳しく書かれていますので、一章の「燃える」のあらすじだけ引用しておきます。全てのあらすじが気になる方は、探偵ガリレオwikiをお読みになってください。
「花屋通り」と呼ばれる人通りの少ない通りで、局所的な火災が発生し、たむろしていた若者が焼死した。焼け跡から変形したポリタンクが見つかったこと、また、周辺にガソリンの臭いが充満していたことから、何らかの弾みでポリタンクに火がついたとして捜査が始まるが、同じ現場に居合わせて怪我を負った連中が、被害者の後頭部から突然火が上がったと証言するなど、火災が発生した原因については手がかりがつかめない。
マスコミの唱えだしたプラズマ説を検証するため、草薙は大学時代の友人、湯川の元を訪ねる。現場を再び訪れると、一人の少女に出会う。その子は事件当日、「赤い糸が見えて、それを探していた」と話していた。その言葉に興味を持った湯川は、ある工場に目をつける。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A2%E5%81%B5%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%AC%E3%82%AA
湯川学の言葉を集めてみました。
学者たちは純粋なだけさ。純粋でなければ、劇的なインスピレーションは訪れない (p.107)
残念だが、科学者は実験をして確認しなければ、自分の説を迂闇には口に出したくないものなのさ(p.109)
科学者だって、冗談をいう時はあるんだよ (p.134)
考え出すより、見つけ出すという部分のほうが多いんだがね。そういう意味では、科学者は常に開拓者といえる。研究室にこもって考え事ばかりしているのが科学者だと思ったら、大きな誤解だぜ (p.183)
人間の思い込みというのは厄介なものだ。シャボン玉の中に空気が入っていることは知っているのに、目に見えないがために、その存在を忘れてしまう。そんなふうにして、いろいろなものを人生の中で見落とさなきゃいいがね(p.281)
特殊性に目をくらまされず、客観的事実にだけ注目すれば、また別の解答も見えてくるんじゃないかな(p.287)
僕はデータが揃うまでは結論を出さない主義なんだ(中略)そのデータが正しいのかどうかを、まず検証しなくちゃな(p.300)
人間の記憶というのはそういうものさ。錯覚する動物なんだ。だからこそ、オカルト話があとを絶たない (p.311)
(中略)という証拠もない (p.323)
慣れないことはするもんじゃないな (p.324)
物理学科第十三研究室、湯川学の研究。
相対性理論とダーウィンの進化論について、ニュートン展開しようとする研究だ (p.158)
つまり、一般の人には糞の役にも立たない研究だ (p.159)
人を助ける場面での湯川学。
「合理的にいこう」湯川は台所の窓を大きく開けると、その場でしゃがみこんだ。自分を踏み台にしろという意味らしい。 (p.198)
第四章「爆ぜる」の木島教授。
いかなる理由があるにせよ、エントリーを忘れるような選手は試合に出るべきではない。また、そんな選手が勝てるはずもない。学問も、やはり戦いなんです。誰にも甘えてはいけない(p.261)
草薙刑事が言う湯川学の特徴の一つ。
相手が感情的になっても、自分のペースを決して乱さないのが、この男の特徴(p.297)
佐野史郎さんの解説より。調べていないので、真偽はわかりませんが、解説にはこう書かれていました。
どうして、東野圭吾さんの『探偵ガリレオ』の解説に登場することになったのか──。読者の方々も、不思議に思っているかもしれない。それは、何を隠そう、東野さんは、僕をイメージして『探偵ガリレオ』の主人公である天才物理学者・湯川学を書いたといういきさつがあるからである。
ドラマや映画の湯川学役って、確か。